2024年 2月の星空を撮る





惑星状星雲 M97(右) と渦巻銀河 M108(左) を撮る

上の写真の右下に丸い星雲があり、その中にやや暗い部分が2つ並んでふくろうの目のように見えることから別名を ふくろう星雲 ともいう。おおぐま座にある惑星状星雲で、望遠鏡を使っても肉眼では全くといっていいほど見ることはできないが写真では、なるほどふくろうの目に見える
1781年にフランスのピエール・メシャンによって発見された天体で、M97というメシエ番号が振られている

上の写真の左上に細長い銀河が写っているが、これは渦巻銀河を横から見たもので M108 というメシエ天体番号が振られている。ピエール・メシャンがM87と同時に発見している。写真にはM87とM108が共に写っていて、その対比が面白い


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カメラ SONY α7RM3
鏡 筒  SD81S(リングスペーサーに換装)、SDフラットナーHD+レデューサーHD、625mm×0.79(F7.7→6.1)
赤道儀 SXD2、ノータッチガイド
ISO128000、露出時間 270秒(30秒×9枚)、σクリッピング加算平均処理で人工衛星の光跡を消す

2024年02月13日21時07分から 揖斐谷







北天の M81 銀河団 を撮る

右の渦巻き銀河がM81、左の細長い葉巻のように見える銀河がM82で葉巻銀河と呼ばれる。この2つの銀河は1774年ヨハン・ボーデによって同時に発見された
2つの銀河の距離は近く15万光年しか離れていない。数千万年前に2つの銀河は近接して、M81の教授巨大な重力の影響を受けてM82は変形させられ、スターバーストを引き起こしたと考えられている

これらは北天にあるため、南天を明るく照らす街明かりの影響が少なく、短時間露光でも比較的良好な画像が得られた

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カメラ SONY α7RM3
鏡 筒  SD81S(リングスペーサーに換装)、SDフラットナーHD+レデューサーHD、625mm×0.79(F7.7→6.1)
赤道儀 SXD2、ノータッチガイド
ISO128000、露出時間 300秒(30秒×10枚)、加算コンポジット処理

2024年02月13日20時55分から 揖斐谷







かに座の散開星団 M67 を撮る

かに座には有名なM44(プレセペ星団)の他にもう一つ散開星団がある。M67で、M44が蟹の甲羅の中にあるのに対してM67は蟹の南の爪付近にある。シャルル・メシエは1780年に記しているが、その前年にケーラーが発見している

散開星団M67を構成する星の数は明るい星だけで約80個、暗い星まで数えると200個以上にのぼる。散開星団の中でもとりわけ老齢な星が多く、いずれも100億歳を超えるという。太陽系からの距離は約2700光年で、M44kの577光年の距離にあることと比べてずっと遠くにある
ちなみに太陽系からM44までの距離は1989年に打ち上げられたヒッパルコス衛星によって精密に観測されている

上の写真はM67を中心にトリミングしている

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カメラ SONY α7RM3
鏡 筒  SD81S(リングスペーサーに換装)、SDフラットナーHD+レデューサーHD、625mm×0.79(F7.7→6.1)
赤道儀 SXD2、ノータッチガイド
ISO6400、露出時間 270秒(30秒×9枚)、加算コンポジット処理

2024年02月13日20時45分から 揖斐谷







かに座のプレセペ星団 M44 を撮る

春の星座の中でも地味であまり知られていない、かに座。ギリシャ神話でも大蟹がヘルクレスにあっさりと踏みつぶされるという、なんとも惨めな結末が描かれる
かにの甲羅は4つの恒星δ星、γ星、η星、θ星で囲まれた四辺形で、その中に散開星団M44がある。4星はいずれも暗い恒星なので、先にM44が目にとまることも多い
ガリレオ・ガリレイは1609年に自作の望遠鏡で観察して、星の集まりであることを発見した

上の写真はM44だけを切り出したもの。M44を構成する恒星のうち多くがオレンジ色をしている。これはM44が恒星寿命としては比較的高齢であるためとされている


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カメラ SONY α7RM3
鏡 筒  SD81S(リングスペーサーに換装)、SDフラットナーHD+レデューサーHD、625mm×0.79(F7.7→6.1)
赤道儀 SXD2、ノータッチガイド
ISO6400、露出時間 270秒(30秒×9枚、σクリッピング加算平均で人工衛星の光跡を消す)

2024年02月13日20時28分から 揖斐谷







オリオン大星雲 M42 を撮る

せっかくの新月期だが、23時頃から雲が広がるというあいにくの予報。それまでに撮影を済ませようと、街明かりや施設の照明が煌々照らす中で撮影を始める。冬が終わる前にオリオン大星雲42は撮っておきたい
春特有のもやっとした空気で大気の状態は良くなかったが、撮れただけよしとする他はない

オリオン座の小三つ星の中央にあるM42は、街中からも少しくらいところであれば肉眼で容易に識別できる。明るさは4等級に相当
M42は北にM43が隣接していて、鳥の頭のように見える。M42とM43は実際には同一の星雲の別々の部分であるらしい。またM43の中心部には恒星がある
M42の中心には5等星があり、実際には4重星でトラペジウムと呼ばれる
M42は電離水素領域で赤色に近い光を発しているが、肉眼では確認はむずかしい

リングスペーサーに換装しているので、回折光が均一となり星像は美しい

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カメラ SONY α7M3(IR改)
鏡 筒  SD81S(リングスペーサーに換装)、SDフラットナーHD+レデューサーHD、625mm×0.79(F7.7→6.1)
赤道儀 SXD2、ノータッチガイド
ISO3200、露出時間 957秒(60秒×7枚、30秒×11枚、15秒×9枚、8秒×9枚、σクリッピング加算平均で人工衛星の光跡を消す)


2024年02月13日21時42分から 揖斐谷










冬の星座に別れを告げる

珍しく新月に雲1つ無い快晴の夜だった。月没後の西天には沈みゆく冬の星座がくっきり
この冬はなかなかいい条件で星空撮影ができなかったが、最後になってようやく機会が訪れた
プレアデス星団(昴)は山影の下、冬のダイヤモンドをぎりぎり収めることができた。


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14mm、ISO800、f2.0、40秒、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはoff、赤道儀で恒星追尾撮影、揖斐谷
SONY α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM

2024年2月12日22時54分








街明かりの中 冬のダイヤモンドを撮る

珍しく新月に雲1つ無い快晴の夜だった
ポータブル赤道儀に超広角レンズをセットして恒星追尾で撮影。北極星は鉄塔に見え隠れしてコンパス頼りに赤道儀をセットすることになるが、この場所は近くに送電鉄塔があり高圧線が頭上近くを横切っている。磁気偏角を正確に合わせようとしても不安定になることは避けられない。晴れていて文句を言うのも何だが、町近くの撮影は困難を伴う

10枚撮影したうちガイド状態のよい5枚を選んでダーク減算後に64bitで加算コンポジットした

左下には強烈な街明かりが邪魔をしている。それでも0時近くになると街明かりも収まってなんとか星空が観望できるようになる。冬の星座の恒星の色の違いもわかると思う
雲に邪魔されることなく、冬のダイヤモンド全体を撮影することができた。14mmでこの画角だから、20mmでは全体を収めようとするとぎりぎりだ


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14mm、ISO800、f2.0、75秒(15秒×5)、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはoff、赤道儀で恒星追尾撮影、美濃平野部
SONY α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM

2024年2月09日23時38分








浮かび上がる 冬の星座と淡い冬の天の川

新月期に雲1つ無い快晴の夜空が広がった
山並みのシルエットは右から小島山、そして池田山。その左には大垣市街地の街明かりが広がる

オリオン座の三つ星を天の赤道が横切る。西に傾いた冬の星座は少しずつ西の山際へと沈んでいく。撮影時のシリウスの高度は29.72°、方位は35.278°。この夜のシリウスの南中は21時24分。オリオン座の南中はそれよりも早い20時15分で、この時の三つ星の中央のアルニラムの高度は53.24°。オリオン座の撮影には南中時が最も適しているのだが、撮影場所からの南天は光害と人工物があって撮影には不適。やがて月も出てくる時期になるだろうから、ここでの冬の星座観望は今夜が最後か

街明かりが邪魔をする中で撮影した写真だが、淡い冬の天の川が横たわっていることがわかる。天の川はシリウスとプロキオンの間を通ってふたご座の足元を通り、右のぎょしゃ座にかけて横切っていることが分かるだろうか

天の川というと松尾芭蕉の有名な句

あらうみや さどによこたふ あまのがわ (荒海や 佐渡に横とう 天の川)

がある

中学校で国語を教えていた当時からこの句には違和感を感じていた
この句の季語は「天の川」で季節は秋。改めて言うまでもなく旧暦の秋は七~九月だから、天の川がはっきりと眼視できるのは太陽暦で8月ごろだから、季語との齟齬はない
しかし芭蕉がこの句を詠んだのは元禄二年七月七日、旧暦の七夕である。太陽暦に換算すると西暦1689年8月21日。この日の月齢は6.0で月没はおおよそ21時30分頃。直江津における句会の発句として芭蕉は詠んでいるのだが、この時の天の川は、月没後には南南西から天頂に立ち上がっていて、直江津から見た佐渡の方角に天の川が横たわっていることはない。どうも芭蕉は句会の当日に天の川を見てこの句を詠んだというわけではなさそうだ、ということになる。そう考えると、冬ならいざ知らずこの季節に荒海というのも違和感がある
史実としては芭蕉が直江津
(今町古川市左衛門宿)に滞在していた時には天候は「午前は雨、昼は曇り、晩は強雨」だったらしい(その前日も雨・晴れ/雨/雨とあり、芭蕉は直江津では天候に恵まれなかった)。芭蕉はおそらく以前から温めていた句を句会で披露した、というのが事実だろうと考えられる

閑話休題。三連休明けは気温の上昇と花粉の飛散開始が待っているらしい。そのうちに黄砂もやってくるだろう
しばらくの星空の見納め


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14mm、ISO800、f2.0、15秒、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、美濃平野部
SONY α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM

2024年2月09日23時33分








春霞の中の冬の星座

下の写真を撮影した直後に西から雲が押し寄せてきた。移動速度が速いようなので、ラジオを聞きながらしばらく待ってみると、雲が去った後に春霞が空を覆った
上の写真は下の写真の撮影から50分経過したもの。冬の星座が西の空に傾いている
まだ撮影する機会もあるだろうと、早めに切り上げた

中央下にオリオン座、その上にふたご座。そのすぐ左に春の星座のかに座とかにの甲羅にあたるプレセペ星団が見える
オリオン座の右下で青白く輝く1等星がリゲル。そこから時計回りにおおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、ふたご座のカストルとポルックス、右に傾いてぎょしゃ座のカペラ、ぎょしゃ座のやや左下におうし座のアルデバラン。アルデバランはヒアデス星団にあり、ヒアデス星団はつりがね星という和名が知られている。これで冬のダイヤモンドの完成。ヒアデス星団の右にはプレアデス星団、こちらの和名はすばる(昴)

冬の星座が西へ傾き始めると時の流れが速く感じられる。星空の世界でも、春は近い

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14mm、ISO800、f2.0、15秒、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRは弱、長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、美濃平野部
SONY α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM

2024年2月08日00時19分








冬の星座を見送る -美濃平野部-

立春を過ぎて暦の上では春。夜空は春霞がかかったような、もやっているような春特有の様相に変わってきた
この夜は揖斐谷はずっと小雨が降り続き、せっかくの新月期なのに星空撮影はできない。もっとも撮影地点は林道に残雪が残り、落石も多いのでしばらくは入ることはできない

ここは光害は比較的少ないものの、東天から天頂は人工物が邪魔をするのでかろうじて西天だけが星空が見られる。右の山際には山に隠れようとする木星がひときわ明るく輝く。右上の輝星はぎょしゃ座の1等星カペラ。ふたご座のカストルとポルックスは天頂の写野外

冬の星座が見られるのもあとわずか。木星の観望期も終わろうとしていて、星の巡りに時の流れを知る

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14mm、ISO800、f2.0、13秒、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRは弱、長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、美濃平野部
SONY α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM

2024年2月07日23時29分